bitter sweet
「ゆ、雪……」

「それにッ!」

 我慢していた感情の波が一気に押し寄せるように、自分の中に溜まった気持ちを吐きだす。

「それに、マコトさんは……同級生の叔父さんでッ、私が“真っ暗な家に帰りたくない”って言ったのを“女の子が遅くまで帰らへんのは両親が心配するよ”って……送ってくれはっただけでッ! そやからッお母さんとか……近所の人がゆってるような変な人ちゃうし……ッ」

「雪和……」

 私に伸ばされたお母さんの手を乱暴に振りはらう。

「でも……ッ! お母さんは私より……近所の人の話を信じたんよね? 私の話なんか、いっこも聞こうともせんくせに……何が……“信じてた”やのよ。私の何を見て“信じてた”って言うんよッ!? 出てって! この部屋から出てってよッ!!」

 渾身の力を込め、私の部屋からお母さんを追い出す。嫌い……お母さんなんか大っ嫌い……大っ嫌いやッ!!

「……ふッ、くッ……う……ぅう~……ッ」

 ドアに鍵を掛け、一人泣きじゃくる。ドアの向こうでお母さんが必死に私の名前を呼び続けてる。

 和紗に会いたい……。どうせ同じ疑われるんなら……和紗とが良かった――!



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