bitter sweet
 雪和……あれからまともに口も聞いてないな。やっぱり、いきなりキスしようとしたんはまずかったんかな。

「せめて、好きや、ゆうてからのが良かったかな」

 あと少しで誕生日会、か。断られんのは目に見えてるけど、雪和に告ろかな……。

「そういや、アイツ……プレゼント交換したいゆうてたな」

 金、どうしよ……マコトさんから借りる、は絶対却下!って言うても、金なかったら……。

「あ。俺、そういえば……」

 飲みかけのココアをテーブルに置き、自分の部屋へ向かう。実家を出て来た時のボストンバッグの外ポケットを探る。

「あん時、金浮かせてたはずやから……あったあった」

 家を出る前にお袋から渡された茶封筒……ともうひとつ封筒。

「あれ、コレ……?」

 “交通費と叔父さんへの手紙入れとくから、ちゃんと挨拶するんよ”

「――……やっば。すっかり忘れとった」

 お袋からマコトさんに渡す手紙、預かってたんや。

 今更渡してもな~……。つか、何て書いてあんねやろ?

 好奇心と少しの罪悪感――人の手紙読むのはアカン事やけど……まぁ多分、“よろしく頼む”みたいな感じやろうな。



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