bitter sweet
「僕は、彼女のお母さんから知らせを受けて急いで病院へ向かった。……でも遅かったんだ」

「遅かった……って?」

「僕が病院に着いた頃には彼女はすでに……息を引き取った後だったんだ」

「…………」

 なんも言われへん。こんな時、何て言えばエエんかわからへん……。

「その後、彼女の家族は逃げる様に引っ越して行った。病院の保育器に小さな君を残して、ね。それを知った兄貴夫婦が君を養育したい、と申し出て来たんだ」

「……親父らが?」

「うん。まだ僕は子供だったから、とてもじゃないけど赤ん坊を育てていく事は出来なかった。両親からは勘当されていたし、頼れるのは兄貴しかいなかったんだ」

 ……じゃあ、なんで俺を追い出したんや――?

「マコトさん、さっき言うてた……わがまま、って」

「君を兄貴夫婦の養子とした時にね、君が混乱するといけないから会わないで欲しい、と言われたんだ。僕も、それを了承したし、何より君の為にもそれが最良だと思った」

「…………」

「でも兄貴は律義な人でね、毎年君の写真を送ってくれてたんだ。『和紗がリレーで一等取った』とか『和紗は少々元気過ぎるが、素直な良い息子に育っている』ってね」

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