bitter sweet
「あの~、すんません」

 ポーラスターに着いた俺は早速、店のエプロンをつけた若い男に声を掛けた。

「はい! 何かお探しですか?」

 『スマイルはタダです』みたいな無邪気な笑顔……の割にめっちゃ凝視してくる店員の兄ちゃん。

「や、客と違(ちご)うて、ちょっとお願いがあって寄らせてもろたんです。ここの店長さんは……」

「あ、さっき休憩で外出した所なんです。宜しかったらご用件お伺い致しますよ?」

 今時っぽい兄ちゃんやのに意外。めっちゃ気ぃ利くけど、なんややっぱりじーっと俺の顔見てるなぁ……。


「あ、ほんならこのMDとチラシ渡してもらえます? 良かったら聴いてくださいって……ほんで気に入ってくれはったら、店のBGMで掛けてもらえたらめっちゃ嬉しいんですけど」

 兄ちゃんの視線に戸惑いつつ、カバンから取り出したMDとチラシを渡すと、「少々お待ちを」と言って店の奥に消えたかと思うと、すぐに戻ってきた。

 手にMDプレーヤーを持って。

「え……え?」

 うろたえてる俺を知ってか知らずか、俺のMDをセットし兄ちゃんはイヤホンで聴き始めた。



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