bitter sweet
 そんな事を考えてると「和紗、マフラー貸して。巻いたげる」と言って、俺の手にあるマフラーを雪和が持っていく。

「和紗、もちょっとこっち来て」

 言われるまま手招きする雪和に近付き、ブルーのマフラーが首に回った瞬間、ぐいっ、と引っ張られる。

「うわ……っ」







 ちゅ……

 触れたと言うよりは当たったみたいな、でも柔らかい感触が唇に残ってる。

「え……えッ!?」

「やった! キスは私が先~!」

 ふ、不意打ちや……。ってか、まさか雪和からしてくるなんて……思ってなかった。

「おま……ッ、卑怯やぞ……ッ」

「和紗かって、私より先に告ったやん? これでおあいこッ」

 ――女ってムードが大事なんちゃうんか?でも、変に意識しながらするよりは、俺ららしい、かな。

「ちゅうかさ、雪和、お前帰らんでエエんか?」

 先にキスされてもうた恥ずかしさもあって、ずっと疑問に思ってた事を雪和に問い掛ける。

「……帰らへん、帰りたくないもん。……和紗、私とおるのイヤ?」

「イヤちゃうけど……、でもこんな真っ暗ンなってんやし、心配してんちゃうんか?」

「絶対イヤッ!! お母さんなんか嫌いやもん!」




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