bitter sweet
 “お母さんなんか嫌い”って……。

 とりあえず風を避けるために、公園の真ん中にある大きな滑り台の縁に腰掛ける。
 何があったんか、詳しく聞くと前にマコトさんが車で送ったのを、近所の人が見ててそれが雪和のおかんの耳に入ったらしい。

 近所の人……ってあん時ジロジロ見てた犬連れてたおばはんか?

「どうせ変に言われるんやったら和紗とが良いって。見つかったらあかんから、2階から降りようと思って……」

 雪和って意外と発想が大胆やな……。でも……。

「……俺、雪和が落ちた時心臓止まるか思ったんやからな」

 雪和が泣きそうな顔で「ごめんね」と呟き俯いた。

 それで“帰りたくない”か。気持ちわからん事もないけど……。

「帰ろう、雪和。送ってく」

 すっ、と立ち上がった俺は、雪和に手を伸ばす。

「なんで? ……私帰りたくないッ!」

 横を向いて抵抗する雪和。

「俺も一緒に行ったるから。な、帰ろ?」

「イヤやって言ってるやん! ……そんなに私帰したいん? 和紗は……私と一緒におりたないのん?」

 目にいっぱい涙を溜めて、雪和が俺にすがってくる。

 違うんや、雪和。それじゃあかんねん……ッ。




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