bitter sweet
「俺、前にもゆうたと思うけど。逃げてるだけやったら何も解決せーへんねん」

 一生懸命、雪和に言い聞かせる。今、逃げ癖ついてしもたらコイツは一生イヤな事から逃げてまう。でも、そんなん甘えてるだけなんや。
 俺が……関西におった時にやんちゃばっかりして親父困らしてたあん時みたいに。

「やだ……帰らへんも……ッ……和紗と一緒におるのッ……」

 泣きじゃくる雪和の頭を優しく撫でてやる。

「ほんなら……雪和。俺の話聞いてくれるか?」

 俺は今日、マコトさんから聞いた話を包み隠さず雪和に話した。

 マコトさんか親父か……俺がどっちかを選ばなアカン事も――。








「マコトさんが……和紗のお父さん……? 和紗は……決めたん?」

 驚きを隠せないといった雪和の問い掛けに「ちょっと迷ってるけどな」と答える。

「俺も雪和と一緒やねん。俺もず~っと逃げとった。でも……それじゃアカンってわかってん」

 深呼吸をする。多分、俺の決断に雪和は反対する。でも、決めた。







「俺は関西に帰る。今まで親父に向き合ってこんかった分、逃げんと親父と向き合おう思てる」



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