bitter sweet
 ……なんやこの兄ちゃん、全く行動が読めん。
 それにしても“聴いてくれ”と言ったものの、目の前で聴かれるとさすがに気恥ずかしい。

「……えっと、ほんならよろしく……」

 お願いします、と言うより早く、帰ろうとする俺の腕を兄ちゃんが掴んだ!







 げ!!!!やっぱソッチ系なんかあッ!?

「すんませんッ!! 俺ノーマルなんでッ!!!!」
「お前、和紗やろッ!? 佐々木 和紗(ささき かずさ)!!」

 ほぼ同時に叫び、お互いがお互いの言葉に驚いた。

「へ? ……そうですけど……?」

「オレやオレ! お前が転校してまうまで遊んどった健一! 小野 健一や!」

 健一……けんいち……。呟きながら、目の前の兄ちゃんの顔を改めてじっくり見た。

 髪の毛が茶色で耳にピアス――……待てよ。転校前の中学校は坊主頭が校則やった(当然、俺はそんな校則守らんかったが)。この顔に坊主頭…………?

「……思い出したッ!! 健ちゃんか!? なッなんでこんなとこにおんねんッ!!」

「こっちの大学、試しで受けたら合格してんや。オレもまさか和紗に会える思てなかったけど……えらい久しぶりやなあ」




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