bitter sweet
 マコトさんの肩が震えてる。痛いくらいぎゅっと抱き締められながら、大人の男の人も泣くんや、と思う反面申し訳なさでいっぱいになった。

「ごめん……なさい。心配掛けて……ごめんなさ……ッ」

 マコトさんにほっぺた叩かれて気付いた。俺は――親父から怒鳴られた事はあっても殴られた事は……一回もなかった。俺がどんなに迷惑かけても……親父がこんな風にしてくれた事はなかったんや。

 俺が親父やマコトさんに出来る事――わかった気がする。







「――帰る、って兄貴の所に?」

 俺とマコトさんは、ひとしきり泣いた後、部屋に戻ってきた。そして、俺はマコトさんが淹れてくれたココアを飲みながら、関西に帰る事をマコトさんに話した。

「うん。俺、今まで親父に迷惑ばっか掛けてたし、真面目に勉強して親父の高校目指そかな……って」

「そりゃ、兄貴は喜ぶだろうけど……」

「とりあえず……今の俺に出来る親孝行ってそれしか思い付かへんし、それに……親父にギターも教えて欲しいし」

 ただ問題は、偏差値がな~……。親父の高校、進学校やし。

「……ゆきなちゃんは、知ってるの?」



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