bitter sweet
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 あれから俺は必死に勉強した。けど、いきなり頭が良くなる訳もなく、見事に不合格。それでも平均より上の高校には合格した。

 今までの俺からは考えられへんほど真面目な高校生活。

 進路を決める時、マコトさんと暮らす、と言った俺に親父はあっさりと承諾してくれた。

 毎月一度は必ず関西に帰る事を条件に、再び俺はこの街に来て、マコトさんと一緒に暮らしている。

 少しでも生活費を入れようとバイトも始めた。

 ――雪和との約束の日は明日。プレゼントする曲は出来てんのに……歌詞が書かれへん。

 マコトさんに相談したけど“自分の気持ちを素直に書けば良い”と言うだけで……。

「じゃあ、行って来るね。和紗、戸締まりと火の元だけは気をつけて」

「ほーい、いってらっしゃ~い」

 マコトさんは、明日から数日親父ン家に滞在する。その時に、マコトさんと親父の両親(俺から見たらじーちゃんばーちゃん)に20年振りに会う予定らしい。

 マコトさん曰く、俺のお陰で両親に会う決心がついた、と言ってた。

「アカン……やっぱり浮かばへん」

 白紙のノートを睨み付けてみたものの何もエエ言葉が浮かばへん。

「……ま、歌詞はアドリブで行こ」

 明日、やっと雪和に会えるんや――早く、明日にならへんかな……。


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