bitter sweet
 MDから流れる和紗の曲を聞きながら、手を組んで祈り続ける。

「すみません、閉店なんですが……」

 約束をすっぽかされた女に見えたのか、店員が悲しそうな申し訳なさそうな表情で声を掛けてくる。

 ……まぁ、イヴに窓の外見ながら祈ってたら、誰でもそう思うよね。

 支払いをして喫茶店を出ると、2時間前までは賑やかだった商店街がしん、と静まっている。

「和紗……どこやろ?」

 5年前に和紗にもらった真っ白なマフラーを首に巻き、チラシに書かれた簡単な地図を頼りに歩いて行く。







 聞き覚えのある曲に足が止まる。さっきまでMDで聞いていた曲が流れている。

 鼓動が早くなる。和紗が近くにいる、早く、早く会いたい!……そう思うのに私の足は思う様に動いてくれない。

 だんだん音が大きくなる。と、見覚えのあるブルーのマフラーをしている男の人が、高校生らしい女の子2人の前でギターを弾いている。背は高くて肩幅も広くて、まるで知らない男の人みたい。でも横顔があの頃の――大好きな和紗の面影が横顔に残っている。



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