bitter sweet
 ギターを置き、雪和の元へ近付く。遠目で気付かんかったけど、5年前よりもかなり……綺麗になってる。

 涙いっぱい目に溜めて雪和が俺を見上げる。なんか、言わな……気の利いたセリフッ。

「雪和か……? 久しぶり……てか、なんやあの……き、綺麗ンなったな……」

 全然気の利かん……野暮ったい言葉。雪和と次会う時はカッコ良くキメたろ思てたのにッ!!







 トン、と心地よい重みが伝わった瞬間、「ドラマみたいッ」とさっきの女らが騒いでる。

「和……紗ッ……和紗ッ……かず……ッ」

 久しぶりに聞く雪和の甘い声――俺は遠くで騒ぐ女らの存在も忘れて、雪和にキスをした――。

 5年前、俺とそんなに変わらん身長やった雪和は今、俺の腕にすっぽりと収まるくらい壊れそうなほど華奢になってた。

「会いたかった……和紗」

 雪和が俺の腕の中にいてる。でもその前にあの女ら、どうにかせんとな……。

 俺はギターをケースに入れ、そそくさとその場を離れようとしたが、案の定ついてきてる足音が聞こえる。

 ……邪魔されてたまるかッ!!

「雪和ッ、アイツら撒くぞ!」

 未だ放心状態の雪和の手を取ると、俺らは走り出した――。




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