彼-id-SCOUP
(わっ、わっ、シャツ! 前、はだけちゃって――)
小さく寝息を立てる見知らぬ男子。
脇に無造作に脱ぎ捨てられた上履きの色からすると、
(同じ1年、かな?)
耳にかからない程度に伸びた黒髪が、彼が息をする度にさらりと揺れる。
(背、高いなぁ……)
はだけたところから覗く身体は無駄がなく均整のとれた肉付き――って、これじゃ変態だ。
と、
「ん……」
もそっ、と身をよじったかと思うと、そのままずるずる、と身体を横に倒し始め、
「えっ!? わ、あ、危な――」
慌ててわたしは彼を支えようと手を伸ばし、
「きゃぁっ!!」
力がないせいでそのまま引っ張られて一緒に倒れてしまった。
「い、いたたたた……って、わっ!!」
コンクリートの床に打ちつけた身体に走る痛みにしかめていた顔の緊張を解いた瞬間、別の緊張が身体の温度を上げる。
だ、だって。
(か、顔! ちかっ!!)
目の前に、彼。
(まつげ、長い……って、そうじゃない!)
覆い被される形で彼の下敷きになっていたわたし。
慌てて脱け出そうにも重くって。
(い、息~あたるぅぅぅ~!)
生まれて初めての異性との距離で声も出せずジタバタとしていると、
「う、ん……」
ようやく彼が目を覚まし、ゆっくりとまぶたを開けて――