彼-id-SCOUP

「ち、違います! い、いいから、起きて!!」

 とんでもない第一声に怒鳴り気味に否定するわたし。

 なのに彼ときたらそれを気にするわけでもなく、寝ぼけ眼のままのろのろと起き上がる。

「んっ……く、あ……」

 両腕をぐっ、と伸ばして背伸びをする彼。

 やっぱり背、高いなぁ。

 ほんとに同じ学年かしらと思うくらい。

 なんて座り込んだまま彼を見上げていると、不意に振り返って見下ろされ、

「ところでアンタ、誰?」

「なっ!?」

 いきなりのアンタ呼ばわり。

 やっぱりこの人、失礼だ。

 わたしは立ち上がりスカートの裾を払うと、精一杯にらみつけて、

「その前に、重かったです! プリント、シワになっちゃったじゃないですか!!」

 同じ学年の人なのについ敬語になっちゃう辺り、ちょっと情けないけど。

 でもわたしにしてみれば上等な出来だ。

 すると彼は軽く頭を掻いて、

「わり……」

 反省しているのかそうでないのかよくわからない態度で答えた。

 まだ寝ぼけてるのかな?

 だからってこの態度はあんまりだと思う。

 と、再び抗議をしようかと口を開きかけたところで、

「んじゃ……」

「え?」

 背を向けて屋上入口へと歩き始める彼。

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