彼-id-SCOUP

(な、なんなの!? あの人!)

 あんまりにも頭にきてその背中に“あっかんべー”をしたその瞬間――

「俺、白鳥光(しらとりみつる)。アンタは?」

 振り返り様不意に尋ねられて一瞬意味を理解しかねるわたし。

 すると彼は鼻でため息をついて、

「名乗られたら名乗るのが筋、だろ?」

「え、あ、こ、琴引美織、です」

 ん?

 ちょっとまって。

 どうしてわたしの方が“筋”を問われなきゃいけないの?

 迷惑かけられたのはこっ――

「あのさ……ここ、俺の特等席。無断で入ってこないように」

「はい?」

「じゃ」

 呆気にとられるわたしにさっさと背を向けて去っていく彼。

 ふと、空を見上げるとやけにあっけらかんとした青が広がっていて、

「…………」

 わたしはふつふつ沸き上がる怒りと共に1つ、心に決めるのだった。

 晴れて同好会が認められたあかつきには、

「関係者以外立ち入り禁止って貼り紙を貼ろう」

 と。

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