彼-id-SCOUP
昼休み明けの授業はちょっぴりつらい。
6限は「これで最後」と頑張れるけれど、5限は「まだもう1限ある」と思ってしまうから。
おまけに満たされたお腹に呼び寄せられた睡魔が、
「えいさっ、おいさっ」
とまぶたの上で組体操。
これにはどんな物語の主人公も太刀打ち出来やしない。
のが普段なのだけれど。
「…………」
今日のわたしは睡魔のピラミッドを下からだるま落とし出来るくらいに目が冴えていた。
そう。
さっきの男子、白鳥光のせいだ。
(そもそも、あそこは公共の場だし)
思い出せば思い出すほど胸がもやもやぐるぐる。
(ちょっと背が高いからって、人を見下しちゃったりして)
迷惑かけられたのはわたしの方なのに。
(シャツの下まで、日焼け、しちゃってるし……)
きっと遊び人なんだ。
そうに違いない。
(声……耳に、残ってる、し……)
今まで聞いたどんな男子の声より、とか。
「──き……」
や、やだ。
なに考えてるんだろ、わた──
「琴引!」
「わひゃいっ!!」
「どうした、顔が真っ赤だぞ? 熱でもあるんじゃないか?」
いわれて頬に手を当ててみる。
っわ。
すごく、熱い。
「気分が悪いようなら保健室いくか?」
「あ、い、いえ。大丈夫です」
「そうか? 無理するなよ?」
「すみません……」
うぅ……。
思考が変なところに飛びやすくなっちゃってるよ。
気をつけなきゃ。