彼-id-SCOUP

 ただでさえ同好会申請なんていう大事なとき。

 先生からの印象を悪くするわけにはいかないもの。

 まだ頬は熱いけれど、それを夏の暑さのせいにして机に向かう。

「で、あるから――」

 そうだ。

 放課後は生徒会室に寄ってみよう。

 実際に発表の場に立つ前に1度は内容をチェックしておいて欲しいし。

 と、ここでさっきとは別の理由で頬が熱くなる。

(鷲尾(わしお)先輩、いるかな……)

 縁なしメガネのその人を思い浮かべる。

 鷲尾輝彦(わしおてるひこ)先輩。

 うちの学校の生徒会長。

 やさしい笑顔と物腰のやわらかい話し方が印象的な、わたしだけじゃない全校生徒憧れの人。

 実は同好会の申請の仕方を色々と教えてくれたのは、その鷲尾先輩なのだ。

 部活選びの際、天文学部がないと知らされて先生から、

「どうしてもっていうんなら生徒会に相談してみなさい」

 といわれて。

 訪ねた生徒会室で初めて出逢ったときのことは今でも忘れられない。

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