彼-id-SCOUP
生徒会会議室と聞くとなんだか緊張してしまうけれど、実際のところは普通の教室とほとんど変わらない。
違うのは並んでいるのが個人用の机じゃなくて折りたたみ式の長机ということ。
それだって普段は部屋の隅に折り重なっていて、今はがらんとしている。
「生徒会室に応接スペースがないもので、すみません」
長机を1台。
パイプ椅子を2脚。
そうなると当然、
「あ、あの、先輩……」
「はい?」
向かい合って座ることが出来ないので並んで座ることになるわけで。
なんというか、これは向き合うよりもずっとドキドキしてしまう。
「どうかしましたか?」
「あ、いえ……」
けれどそれを口にするのは自意識過剰もはなはだしいというか。
まさか、
「ドキドキしちゃうので座り方どうにかなりませんか?」
というわけにもいかないし。
この状況をラッキーと思えるような性格ならよかったのだろうけれど。
「はい。まずはこちらをどうぞ」
そんなわたしの内心を知ってか知らずか、先輩はお皿に乗せたケーキと、グラスを目の前に置く。
「今日はレアチーズケーキとアイスレモンティだそうですよ」
「あ、ありがとうございます」
少し大きめのグラスの縁にはおしゃれに輪切りのレモンが立てられていて、その中では琥珀色の液体の中をたっぷりの氷が踊っている。
グラスの側面についた“汗”が逆にアイスティの冷たさを表していて。
そしてレアチーズケーキ。
「いただきます……ん、美味しい!」
純白のレアチーズケーキの上には季節外れの雪。
それは本体のレアチーズケーキにも使われているフロマージュ・ブラン。
チーズケーキといえば濃厚なチーズの味と甘さを想像するけれど、このフロマージュ・ブランはチーズというよりヨーグルトに味が近い。
見た目もね。
だからチーズケーキそのものもものすご~く口どけがやさしくて、油断してるとあっという間になくなってしまいそう。
このさわやかな味わいのレアチーズケーキにはなるほど、レモンティが良く合う。