彼-id-SCOUP
う~ん。
こんな美味しいもの、本当にもらってよかったのかな?
なんて思いつつも、止まらないスプーン。
あぁ、幸せ……って、目的はこれじゃない!
「あ、あの先輩、申請書の──」
自分のいやしさを反省しつつ、本題に移ろうと先輩の方を見ると、
「なるほど」
わたしが用意した書類をトントン、と机の上でそろえる姿が。
どうやらわたしがケーキに夢中になっている間に目を通してくれていたみたい。
う……。
なんてはずかしい……。
これで内容が悪いとなったらブラジルまで続いてる穴に入っても足りないくらいだ。
「ど、どうでしたか?」
恐る恐る尋ねる。
すると先輩は何枚かめくりながら、
「概ね問題はないと思いますよ」
「ほ、本当ですか!?」
よ、よかった。
これで後はわたしがきちんと発表さえ出来れば──
「ただ……」
「え?」
上昇気流に乗りかけていたわたしの気持ちにブレーキをかけるひとこと。
「ひとつだけ……」
それは思いも寄らぬ内容だった。
「活動場所がちょっと問題かもしれませんねぇ」
「えぇっ!?」