人の恋を笑うな
翌朝、ご飯を食べて島田君は元気に東京に帰っていった


『乙女もいたんじゃない…いい人ね〜男前だわ』


『お母さん…大変気を使っていただきまして…てか違うわよ!彼氏じゃないってあれだけ言ったのに』


『このさい、あの子に決めちゃいなさい。今逃したらチャンスこないわよ!』


『結婚なんてする気もないのにチャンスもくそもないわよ…とにかく彼とはなんの関係もないの

ただの仕事仲間なだけよ。家族だけで盛り上がっちゃってさ』


『あ〜やだやだ…またこの子いきそびれちゃうよ〜世間知らずはダメだね。はい、これ。また白菜とってきて』と鍬を渡された… 大晦日も鍋かよ!



除夜の鐘がなるころ、夏子とおばあちゃんがお節を詰めだした


私とお母さんはテレビを観ながらビールを飲んでいた


『ホントにあの人の事いいのかい?』


『お母さんもしつこいなぁ…私にはね、勿体ないよ。もっと若い子と付き合うほうが島田君にはいいの』


『そんなもんかね…他に好きな人でもいるのかい?』


『30になりゃ好きな人くらいいるわよ』


『じゃあなんで連れてこないんだい』


『そこまで仲は進展してないってこと。いっとくけど不倫とかじゃないわよ…』


『うろうろしてるうちに40はすぐにくるんだから…』


『私には結婚は向いてないのかもね…紀子と話してて思った。紀子は旦那さんになる人とあった時、二人の未来が見えたんだって。でも私には未来なんか見えなかったもん

それどころか今生きるのが精一杯なのよね。だから仕事も恋愛も器用にこなせないというか…お父さんに似たのかな。この一途さ一本気なとこ』


『ダメなとこばかりお前にいっちゃったね…DNA…孫は夏子に託すかな…』


『そうしてよ。私には期待しないでよね』


夏子が台所で怒鳴っているが、私とお母さんは二本目の缶ビールを開けかけていた
< 113 / 180 >

この作品をシェア

pagetop