人の恋を笑うな
お正月の朝、夏子のピアノで目覚めた


景気のいい『英雄ポロネーズ』を弾いていた


夏子のピアノはいい


バイオリンもよかったが、ピアノが好きだ


前にお母さんが『うちが金持ちなら留学させてあげたんだけど』って悲しい顔をしていた


もし留学してたら今頃ピアニストになってたかもしれないな…


朝っぱらからこんな事考えてしまった。私は夏子の教室まで降りていった


『リクエスト、ショパンの木枯らし弾いてよ』


『なによ…おはようも言わないで』と夏子は木枯らしを弾きだした


『この曲はいいよね。誰かに抱きしめられたい衝動にかられるわ』


体育座りで私はのんびりピアノを聞いた


『社長に抱きしめられたいの?はっきり社長に言えばいいじゃない。お姉ちゃんがぐずぐずしてるから、ややこしい人間に邪魔されるのよ…島田さんだっけ?マジでパシリなんてありえないでしょ…本気だよ、彼』


『人生何起こるかわからないわね…半年前なら付き合ってたかもね』


『呆れる。お姉ちゃんには…私は隼人さんと結婚考えてるわよ。彼は養子でもなんて言ってるけど、マスオさんがせいぜいね。あんないい会社辞めさせられない』


『じゃあ結婚したら東京?』


『しばらくはね。後の事はなんとでもなるわよ。今は二人の未来しか見えないかな。だからなるべく彼の仕事の邪魔しないようにしてる』


『結婚はあんたに任すわよ』と私は笑った


夏子はため息をつきながらピアノを閉じた


『お姉ちゃん、お節食べに行こう。今年は奮発してくれたわよ。お父さんお姉ちゃん帰ってくるからって、伊勢海老買ってるの』


『ホントに?やったあ!お父さん大好き』


最高だよ〜お父さん!
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