人の恋を笑うな
紀子の結婚式当日、私は社長に自由が丘のヘアーサロンに連れていかれ、着付け、化粧、ヘアセットまでしてもらった


赤い生地に小さな桜がちりばめられた着物だ


私の姿を見て、社長は驚いていた


『どうですか?似合ってますか?』


『ああ…そのままガラスケースに飾りたいくらいだ。さあ急ごうか』


『あ、まだお金払ってないんで、ちょっとまって下さい』


『桜川さん、社長にもういただいてますので』


『社長!』


『とにかく急ごう。友達待ってるだろ?』


私は言われるまま車に乗り式場に向かった


『ベースは控室まで持っていくよ』


『ありがとうございます。なんかすいません』


『乙女、お願いあるんだ…』


『なんですか?』


『二次会とか終わったら、すぐ俺のマンションに来て。何時まででも待ってるから』


『わかりました…』目も合わさずにしゃべる社長が可愛かった



『ちょっと、あの人が彼氏?』


『うん、そう』


『他の男霞んで見えるわよ!久しぶりの目の保養だわ』と瞳は笑った


『それより段取りは?』


『バッチリだよ。サプライズって事で紀子には内緒』



緊張の中式は始まった。驚いたのは紀子の旦那様だ…紀子より背は低く、ポッチャリしている。でも穏やかな笑顔で紀子をサポートしてる


紀子のあんな幸せそうな顔はみたことなかった


【初めて会った時から未来が見えた】


紀子の言葉が頭をよぎる


ウエディングドレスの紀子の左の薬指に指輪がはめられた


何となく涙がでた。婚姻届けだすより、貴重な場面であり、神聖な儀式


紀子の笑顔が零れた
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