人の恋を笑うな
翌日、茂徳からお昼に電話があった


『乙女、大変だ!』


『どうしたのよ、興奮してさ』


『俺親父になるんだ』


『はああ?何いってんの?』


『ねねが妊娠した!7週目…』


『ホントに?よかったじゃない』


『一番喜んでるのはねねさ。それでもう仕事辞めさせて、うちでゆっくりさせようと思うんだ、どう思う?』


『初産だし、大事にしないとね…病院で相談してみなきゃ』


『親父達には今夜電話してみるよ』


よかった!やっぱり赤ちゃんできたんだ。念願の赤ちゃん、好きな人の赤ちゃん…ねねさん、幸せだろうな


私はうきうきしながら、3階に上がっていった。事務所に文房具を並べたり、ホワイトボードを運んだ


『乙女さん、うきうきですね。何かいいことあったんですか?』と島田君が聞いてきた


私はコピー紙を積みながら『赤ちゃん、赤ちゃん、妊娠よ〜』と鼻歌まじりに答えた


スキップしながら荷物を運ぶ私を見て、島田君は慌てて下におりた


しばらくすると社長があがってきて、『こら、乙女!』と怒鳴った


『あ、なんか書類間違ってましたか?それともこの部屋問題アリですか!』


『妊娠してるのに、荷物なんてさげやがって!なんで俺に黙ってた!』


『そうですよ、乙女さん!ホワイトボードまで一人で運んでたじゃないですか!』


『ちょっとまってくださいよ!私妊娠なんてしてませんよ!』


『どういう事だ?充』


『だって、乙女さんさっき…』


『妊娠してるのはねねさんですよ…私の知り合い!』


社長は私のお腹に抱き着くと…


『勘弁してくれよ…心臓止まりそうになったじゃないか。無理しないでくれ』と呟いた


『ごめんなさい…説明不足で、島田君もごめんね』


『よかったです…』


とんだ勘違いであった。でも会社で社長に抱き着かれるなんて…悪い気はしなかった
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