人の恋を笑うな
『この庭、桜が咲くの?』と夏子が庭を見て言った


『バタバタしててお花見どころじゃなかったけど…』


『古い洋館だけど落ち着くね〜』とお母さんは畳に寝転んだ


私達三人はついついお昼寝をしてしまった


あくまでも平和な親子である



夕方、社長から電話がかかってきて4人で夕飯を食べることになった


お店は和食の店で、私も行ったことのない高級店だった


『お忙しいのにすみませんね』とお母さんが申し訳なさそうに言った


『今日の夜はきちんと空けてましたから。もうコース頼んでます』


『ここってよく雑誌で紹介されてますよね』


『味もいいからね』


夏子はグルメだからこんな情報は早い


前菜から始まり、次々と美味しい料理が運ばれてきた


夏子はなにやらメモってる


なんでもこれも花嫁修業のうちだとか…


お造りも新鮮だし、牛肉の石焼きは絶品だった


『この店はこの内容でリーズナブルだからよく流行ってるんですよ』と社長がいった


『このコースでいくらですか』と夏子がげすな質問をした


『一万円以下だよ』と社長は笑った


『この内容で一万円以下?普通なら二万円ちかくとられますよ』


『こんなお店見つけて接待するのも、会社を続ける戦術です。でもここは1番のお気に入りですね』


さすが社長!経理では助けてもらってます


『社長、明日じっくりみてくるから。社長のも私見立てていいんだよね?』


『任すよ』


『お姉ちゃん、いつまで社長とか呼んでるの?プライベートは名前で呼びなさいよ』


『それが中々直らなくて…』


『一緒に生活しだしたら直りますよ』と社長はクスクス笑う


切り替えられなくて私も困ってる…夜の生活の時、『社長〜』はないよね

< 146 / 180 >

この作品をシェア

pagetop