人の恋を笑うな
入院はあっという間だった。とくに異常はないが、しばらく安静にということだった


私はすっかりへこんでしまい、大人しくベットで寝ていた。食事もしばらく社長が作ってくれた


お母さんから電話があり、妊娠の初めにはよくあることよ、と慰めてくれた


私はすごく敏感になっていた。うつ状態に陥ってしまい、先生に心療内科を紹介された


カウンセリングしてもらったが中々よくならない


茂徳の結婚式がすぎ、ねねさんからも励ましの電話があった


10月に入り、夏子がハワイで挙式をあげた


そして帰ってきてすぐに私のところにやってきた


『アロハ、お姉ちゃん。元気出しなさいよ!何やってんの?』


『なんか…毎日不安で』


『赤ちゃん産まなきゃいけないのに痩せたらダメでしょ。お義父さん、元気だったわよ。来年孫楽しみにしてるって

お姉ちゃんがそんなじゃお兄さん可哀相よ。ほら、これお土産よ。美味しかったからこんなに買ってきちゃった!』


…グアバジュース…何ケース買ってきてんのよ


『こんなの日本でも売ってるじゃない!普通コナコーヒーとか、現地にしかないもの買ってこない?馬鹿じゃないの』


『このグアバ飲んだら気持ち変わるんだから!これはハワイでしか買えないメーカーのよ!』


『だからってこの大人買いなんなのよ!』


『とにかく飲みな!』と夏子はグラスに注いで氷をいれた


私は夏子を睨みながらグラスに口をつけた


美味しい…甘いのにすごく爽やかで知らない味だ


私の表情をみて『ほらごらん!』と勝ち誇ったように笑った


私は自然と笑顔になって、ごくごくとグアバを飲み干した


『夏子、お代わり!』と私は二杯目も笑顔で飲み干した


社長が私を抱きしめた


『乙女が笑った!』そういってみんなの前で泣いた


『武人さん…』


『乙女が…笑ってくれた…』


ごめんなさい…そんなに私の事思ってたなんて…
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