人の恋を笑うな
クリスマスにまた下北沢の劇場に芝居を見に行き、帰りは教会に寄ってクリスマス気分を味わった

そして会社が大掃除の日、私は手伝いに会社を訪ねた


もちろん社長の許可はもらっている


『自分の家はもうしてきたんで、手伝いにきました』と島田さんに言った

『大丈夫ですか?だったら社長の部屋だけしてください。北野も行かせますから』


私はタバコとコロンの混ざる匂いの部屋に入り、空気を入れ換えた


床をほうきで掃いてると葵ちゃんがきた


『奥様!無理なさらないでくださいぃぃ!私がなんでもしますからぁ』


『大丈夫よ。じゃあ葵ちゃんは窓吹いてくれる?』


『はい、窓拭き洗剤もってきましたぁ』


私は鼻歌まじりに床を掃除したりデスクまわりを綺麗にした


『社長こわいですか?』


『え…あの…すごく。でも島田さんはもっと怖いですぅ』


『島田君が?ホントに?』


『一日に10回くらい怒られてます。私、あだ名とろちゅーなんです…』


『とろちゅー?』


『私、ピカチュウに似てるらしいんですぅ…でとろいから、とろちゅー』


『可愛いじゃない。でもスタッフさんは優しいでしょ?』


『はい!それは大事にしてもらってます!パシリに使ってもらって結構なのに、お弁当買ってきてくれたり、お菓子もってきてくれます』


『私の時もそうでした。スーダンの石田さんもいい人よ』


『私…パソコンホントに苦手でインターネットもしたことなかったんです。前の会社でもそれでいっぱいミスするし、営業いっても全然うまくいかないし…

それで頑張って簿記の勉強して3級とりました。それで無難な事務の仕事探したんです。そしたらここの求人が…

ところがここ、経理はほとんどパソコン打ち込んでいくやり方で…私思い切ってノートパソコン買って家で練習してるんですが中々…』


『努力家ね、そういう人間って社長は好きよ。島田君も期待してるんだと思う。あの人は人の事ちゃんと見抜く人だから』


葵ちゃんは顔を真っ赤にして窓をきゅっきゅと磨いていた
< 161 / 180 >

この作品をシェア

pagetop