人の恋を笑うな
マンションに戻ったのはもう夜だった


『明日は一日のんびりするか…』


『そうね…ゆっくりお昼まで寝ましょう』


『やっぱり乙女の家族は楽しいな…すごくいいよ。酒も美味かった』


『でも飲み過ぎよ、しばらく休肝日いれなきゃ』


『そうだな。カルピスでも飲むよ』と笑ってる


『うちも元気な赤ちゃん…産まれるといいわね…』


『そうだな…きっと産まれるさ…』



社長の会社も仕事始めとなった


私は毎日体操をしながら、赤ちゃん雑誌を読んでいる


夏子の披露宴の時にはつんと、ロケットみたいなお腹になった


お母さん達はきっと男の子だと騒いだ


夏子は私と同じ白無垢を着てみんなの前に現れた

すごく綺麗だった


隼人さんは、あの駅で夏子を見送った時のように泣いている


お色直しはピンクのドレスだ


とても楽しい披露宴で、テレビでみたことある人がたくさんいた


その中に思わぬ人を見つけた


木村要…私にプロポーズしてくれた元カレ


要は私の姿を見て笑って手を振ってくれた


私も笑って手を振った


彼の隣には恋人らしき人が寄り添っている


お互いいい時期にまた再会した


披露宴会場で流れる曲を聴きながら、自分の結婚式を思い出してみた


よく考えると私はおもしろいほど余裕があったな


それが面白くてクスクス笑った


『おかしな奴』と社長は私を抱き寄せて頭を撫でた


私の髪はもう肩を越え、胸のあたりまで伸びていた


春になったら、短くしよう…葵ちゃんみたいに
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