人の恋を笑うな
『おはようございます』と私は元気に事務所に入った


『乙女ちゃん、もう大丈夫なのか?』とスタッフさん達が声をかけてくれた


『大丈夫です。昨日ゆっくりできたんで。嘘みたいに元気になりました』


私は掃除をして皆にコーヒーをいれた。そして社長室にもコーヒーを持って行った


『失礼しまーす』


『おはよう、元気そうだな』


『お弁当ありがとうございました!すごく助かりました』


『お前も俺の世話してくれたからお返しだ。借りは返したぞ』と社長は笑った


『あんなの借りになりませんよ』


『今日な…ねねの奴好きな人に食事誘われたらしい。無邪気に電話かけてくるんだよ…あいつには負けた』社長はコーヒーを飲みながら、ポツンと言った


『社長には悪いですけど、上手くいくといいですね』


『だな…』


『なんなら…私、今晩空いてますよ、食事誘いましょうか?』と私は笑った


『焼鳥でもおごってくれる?』


『やけ酒しないならおごりますよ』


『じゃあおごってもらうかな』


こうして、社長の胸の痛みを、私は半分引き受けることになった
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