人の恋を笑うな
駅の近くの古い焼鳥屋で私と社長はビールを飲んでいた


『焼鳥屋は久しぶりだ。去年、弟が会社にきてここに飲みにきた。以来だな』


『弟さんいるんですか?』


『ああ…仕事で大阪からきててな。訳あって、子供の頃、弟だけ大阪の叔母の養子になったんだ。俺より5つ下。ちょうど乙女と俺の間だな…』


『そうなんですか。今年はまだ会ってないんですか?』


『会ってないな…あいつも独身謳歌してるよ。もしかしたら9月の連休にはくるかもしれないな』


『会社きたら紹介してください。社長に似てますか?』


『顔は似てるかもな。でも性格は全然だ。真逆かな』


『おもしろい、会ってみたいです』と私は笑った

『思ったんだけどな…お前、ねねの好きな奴知ってんじゃないの?』


『えええ!なんでですか?』


『なんとなく…』


『しし知りませんよ〜』


『…なんだ知ってるんだ』


『…はい…ねねさんに打ち明けられてびっくりしました…私の男友達だったから…』


『乙女は嘘が下手だな。朝の会話でわかったよ』


『下手なんですかね?私は嘘を見抜く相手がカンいいからと思ってました…』


『そんなとこがお前のいいところかな…今日お前が声かけてくれなかったら、歌舞伎町か六本木のキャバクラで遊んでたとこさ』


社長は淋しそうに笑った。私の胸の奥がキュンとなった…
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