人の恋を笑うな
夏子は少し不服そうな顔をしてたけど、無言で牛乳を飲んでいる


『だからお母さん達に話してもいいわよ…』


『気が向いたら話す…なんか脅す道具が無くなっちゃったわ』


『なによそれ…あんたこそ他に目的あって東京きたんじゃないの?』


『目的はないけど…ただ…しばらくお姉ちゃんちに住まわせてもらおうかなって』


『何いってんのよ、教室どうするわけ?』


『もういいの…生徒の親は私になんか期待してないのよ…よくわかった。だからまたどこかのオーケストラでバイオリン弾きたいと思って…』


『何あったの?あんたがこんなに自信無くすなんてよっぽどよ?』


夏子の大きな瞳からぽろぽろ涙が零れた


それから1時間、夏子は泣きっぱなしであった


私はぼんやりパジャマのままビールを飲んでいた


『今日は涼しいね…夜までパジャマのままごろごろしてようよ』と私は夏子に言った


ベランダを開けるといい風が入ってきた
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