『知りたいんだ…

美雨の事。』


「今、お前が一番近くにいるじゃないか。」


『今の美雨は知ってる。

…昔、美雨になにがあったのか知りたい。』


「誰にだっていろんな事があるさ。」


『美雨は何かを抱えてる…
このままじゃ、美雨はその何かと俺の間で壊れる気がする。』



「美雨が何か言ったのか?」



『この前、ご飯作りに行った時…美雨は泣いた。

声も出さずに泣いたんだ。
俺は抱きしめてあげる事しか出来なかった…
抱きしめて一緒に眠ってあげるしか…』



「……」


『美雨が言ったんだ……

俺が眠ってると思って、
好きって……俺もだ!って言いたかったけど……
こっそり言った美雨の事を想うと…』



「もうちょっとだけ…

待ってやれないか?

美雨は今、お前の為に乗り越えようとしている。」



『なにを…?
なんで分かるの?』


「この五年間…

美雨が外でワンピースはおろか、胸元が空いた服を着た事はない…

泣く事も…

人を好きになる事も…

感情を出す事がなかったんだ。」



『…えっ?』


「お前だけなんだよ…

そこまで美雨に触れる事が出来たのは…
お前が辛いのは分かる…

ただもう少しだけ時間が必要だ。」



『…分かった。』




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