新しい歌
「ねえダイさん、ダイさんはロンリーハーツがきっかけで音楽に目覚めたの?」
それまで珍しく聞き役に回っていたレイが、会話の中に加わった。
「俺かい?影響っていうか目覚めたのはビーチボーイズ」
「ビーチボーイズ?」
レイが私の方を向いて、知ってる?という表情をした。
「浅倉がビーチボーイズというのは初耳だな」
「これでも逗子生まれの逗子育ち。生粋の湘南ボーイですからね。最近のなんちゃって湘南ボーイとは年季が違うんです。海と言えばサーフィン、サーフィンと言えば、『サーフィンUSA』っしょ」
「その湘南オールドボーイ様が、何故かロンリーハーツのボウヤになったんだから、面白いもんだ」
「ようすけはビートルズ?」
「ああ。初めてお前を見た時と同じようにぶっ飛んだ」
レイは私の言葉に、嬉しいやら照れ臭いやらといった感じの事を言った。
「まあ、一番ビートルズの影響を受けたのはシンだろうな」
「そうなのシンさん」
「風間が言う程じゃないよ」
「何言ってやがる。お前とビートルズの話をしたら一晩じゃ済まないだろ。下手すりゃ三日三晩コースだぜ」
「レイは誰の影響なんだい?」
「ぼく?気が付いたら、曲の題名も知らずにピアノを弾いていたから。あっ、ちっちゃい頃からいつも歌っていたのは……」
彼女はその曲を口ずさみ始めた。それは私も知っている黒人霊歌だった。
『Oh Happy Day』
レイの音楽の原点を少しだけ知る事が出来た。