新しい歌
サムタイムでのライブは、私達とレイの関係をより密接にしてくれた。
ライブが終わった後は深海魚へ行き、その日の出来を言い合う。そして、レイは那津子と深海魚のマンションに一泊するというのがお決まりのコースになった。
NEXT ONEの放送以降、レイの所にマスコミの取材が殺到するようになった。
NEXT ONEを放送しているテレビ局などは、十二月の本選まで密着取材をさせてくれと言って来た。しかも、それを別枠でドキュメント番組として放送したいという。
更に雑誌社や出版社が本を出さないかと言って来る始末。俄かに私達の身辺が注目を浴び出したのだ。
レイ程ではないが、私達にも同様の申し入れがあった。
私と心也は今でも業界で飯を食っているから、これまでの繋がりとかもあって、幾つかの取材は受けた。
それこそ、三十年ぶりにマスコミにケツを追い回されたのだが、これらの事が僅か一ヶ月の間で起きた出来事だ。
レイのマネージャーとしてそれら全ての対応に追われていた那津子は、これらの事をどう対処すべきかを迷っていた。
そういった事もあり、十月半ば、サムタイムでのライブを終えた後、私達は深海魚で話し合う事にした。
話は依頼が来ている、ドキュメント番組の件がメインになった。
「テレビの影響は大きい。それを俺達はどう捉えるかだ」
「どうって?」
「単に知名度を上げるという意味なら、この話は一も二もなく受けるべきだと思う。まして、製作がNEXT ONEと同じ局なんだし。ただ……」
私は、ここ一ヶ月ばかりの間に起きている変化に、ある種の不安を抱いていた。その事をどう伝えるべきかで、言葉を探しあぐねていた。