新しい歌
力の抜けた腕を解こうとすると、その手は私の背中から、名残惜しそうに離れていった。
彼女の身体を真っ直ぐに寝かせ、私はその横に腰掛けた。
自然とレイの手を握り、私は彼女の短く刈られた髪の毛を撫でていた。
「こうやって女の子の髪の毛を撫でてやるのは、何年ぶりかな……」
「……なっちゃんには?」
「随分昔にやって上げたっきり……」
「ようすけって、薄情もんだね……」
「だな……」
「ねえ、ようすけが初めて女の子を好きになったのって、幾つの時?」
「初恋の事か?」
「うん」
「小学校の六年生だったかな」
「ませガキ……」
「そうか?今時の子達はもっとませガキだろ?」
「そんな事はないよ……だって、ぼくなんか、ついこの前だもん」
「レイが好きになる男の子だから、きっと優しい子なんだろうな……」
「全然……腹立つ位に薄情もん」
レイの顔を眺めているうちに、私は生まれて初めて、本当の愛おしさというものを感じ始めていた。