新しい歌

「ようすけ……」

「ん?」

「お願いがあるんだ」

「俺が聞ける事か?」

「ようすけがいやじゃなければ」

「言ってみろ」

「顔を……ようすけの顔を触らせて」

「……」

「どんな顔なんだろうって、想像しようにも、ぼくには人の顔が判らないんだ。知りたい……知りたいんだ。お願い……」

 私は握っていたレイの手を自分の顔に近付けた。

 そしてレイの手を開かせ、その指一本一本を自分の顔に触れさせた。

「皺だらけの顔だろ?」

 無言で顔を横に振る彼女。

 レイの指が私の瞼に触れ、鼻梁をなぞり、唇の形を確かめた。

 触れていた指が離れた。

 レイの窪んだ瞼から、一筋の涙が零れていた。

「なんで、なんでぼくには目が……せめてこの目が見えていたら、足が無くても、目が見えていたら……」

「そうだね……どうして神様はレイの目を取り上げたのだろう。でもな、神様はお前に特別なものを授けたんだ……」

 そう、確かに神は彼女に特別な才能を与えた……。

 だが、本当に彼女はそれを欲していたのだろうか。

 特別なものを……


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