新しい歌
「特別って何さ?みんなより、少しだけ歌が上手に歌える事?それを神様から貰う為にこの目が取られたのなら、返して欲しい……。
歌えなくなっても構わないから、見えた方がいい。ちゃんと、ようすけの顔が見たいもん。みんなの顔が見たいもん。特別じゃなくていい。ぼくは、ぼくは普通でいい……」
「レイ、お前の言う普通って何だ?世の中に普通ってものは、本当は無いんだ。いいかい、レイの持っている才能は、誰もが簡単に手に入れられるものじゃない。どんなに苦労しても手に入れられないものなんだ。みんな、何かを持っていて、何かを持っていない。全てを手にしている奴は、この世には存在していないのさ。
目が見えないお前からすれば、確かに見える俺達の方が恵まれていると感じるだろう。けれども、見えている分、上辺しか見ていない事の方が多いんだ。他人を外見で判断したりとかな。世間がお前を好奇な目で見るようにだ。着ている物や、格好だけで判断したり……。
レイはどうだ?違うだろ?お前自身の心に感じたままで相手を見れるじゃないか。レイは俺の事を好きになった、そうだよな?」
「……うん」
「普通、十七の女の子が俺のような男をそういう対象にしないもんさ。何故か判るか?目に映る俺の姿は、オッサンだからさ」
「あんまり、説得力ないよ」
レイの表情に、少しだけ笑顔が戻った……。