新しい歌
彼女は昔から、一つの事にのめり込むと、とことん突き詰めないと気が済まない性格だった。
いい加減な性格の私とは真逆だ。
「それで、今夜のデートの本題は?」
いつもの私ならここで、今夜は久し振りに君の居るベッドで眠りたいんだ、位に心にも無い軽口を言っていたかも知れない。が、今夜の私は、そんなふざけた気分にはならなかった。
「昨日、あれからあの子事を俺なりに考えたんだ」
「うん」
「彼女の才能を世に出して上げたいと思っている」
「うん」
「俺で力になれる事なら、何でもして上げたい」
「具体的には?」
「プロデュースという事なら、君の兄貴が力になれる。昨日は結構辛辣な言い方をしていたが、多分俺以上にあの子に入れ揚げていると思う」
一旦、私は言葉を切り、渇いた喉に琥珀色の液体を流し込んだ。
「曲を書いてみたい」
玲の歌を聴いた瞬間から、私の中でその思いが生まれていた。ただ、それは漠然としたもので、はっきりとした形にはなっていなかった。それは、ここに来るまでの間にしてもだった。
無意識のうちに曲を書きたいと言葉に出してみて、やっと自分の中で確信となって姿になったのだ。