新しい歌
「玲ちゃんの目が見えないのは、生まれつきなの。眼球が普通の赤ちゃんよりも小さく生まれて来て、それで目としての機能が働かない病気だったみたい。歩けなくなったのは、事故のせい。小学生になったばかりの頃だって聞いたわ」
「交通事故か?」
「うん。その時に、ご両親を亡くしたという訳。何でも、玲ちゃんがどうしても海に行きたいってせがんだらしく、その帰りにトラックと正面衝突。あの子だけ奇跡的に助かったけれど、その時の事を結構悔やんでいるみたい。自分が、海に行きたいって言わなければ、事故にも合わずパパとママも死ななくてすんだのにって思っているみたい。その時に脊椎損傷であの子は下半身不随になってしまったの」
「生まれつきの障がいと、追い討ちを掛けるような事故か……。
それだけの不幸が重なりながら、どうしてあの子はあんなに明るく振舞えるのだろう」
「傍から見れば、あの子はハンデを全然苦にしていないように感じるでしょうけれど、決してそうじゃないのよ」
「そう見せているって事か?」
「演技しているとまでは言わないけれど、そういうところはあるわね。でも、一人の時なんか、時々泣いたりしているらしいわ。人前では絶対にそういうところを見せないけれど、それは自分が泣いたりしているところを見た人が、心配するからって。笑っていれば辛い事をみんな忘れられるからって……。
それとね、あの子、絶対に自分を最初に考えるって事をしないの。必ず、周りを見るの。ご両親を事故で亡くした事が、彼女の性格をそう作ってしまったのかも知れない。あの子が我儘を言ったところ、一度も見た事がないのよ」