新しい歌
固定概念に縛られる事なく、自由に創造して行けるものが、玲には備わっていると思う。
たった一度だけ歌を聴いただけなのに、そこまで判るのか?と、他人は訝しむかも知れない。しかし、一度でもあの子から放たれるエネルギーを感じれば、私の言っている事に頷く筈だ。
そんな玲が、いったいどんな詩を書くのだろうか。
「今度、あの子の詩を見せて貰おうかな」
「うん。そうして上げて」
「あの子のレッスンとかは、施設でやっているのかい?」
「そうよ。でも、今ではレッスンなんてしていないわ。あの子の自由にさせている」
「英語とかも君が?」
「ううん。曲として聴かせているだけ。あの子、聴力が私達の何倍も優れていて、どんなに難しい曲でも一度で記憶しちゃうのよ。英語の歌詞にしても、言葉を覚えるというより、メロディと一体化したものとして身体に取り込んでいるから、あれだけ正確な発音が出来ているのだと思う」
「ボイトレとかは?」
「最初の頃に発声の基本を少し。とにかく、どんなものに対しても吸収力がすごいのよ」
天性の才能……それにプラス、声。全てが奇跡としか言いようがない程に、玲は音楽の神に愛されたのか……