新しい歌
CDでも玲の魅力は充分に感じれるであろうが、生の声は更に衝撃が大きい。玲の声は耳だけでなく、直接肌に突き刺さって来るからだ。
私は一度それを体験している。だから、ある程度五感に免疫が出来たようなもので、それが無い心也は一発で感染してしまった。
「この曲、那津子から教わったのかい?」
私は玲に尋ねた。
「この間、風間さんと別れてから、なっちゃんにロンリーハーツの曲を聴かせてって言ったんだ」
玲は、ちょっとはにかみながら、そう答えた。
「ぼく、風間さんの曲、好きだよ。いっぺんで、好きになっちゃった」
私の身体が、内側から妙な具合にふわっとなり、次の瞬間、血が熱を帯びた。
好きになっちゃった……
まるで、クラスの中の憧れだった女の子から、突然前触れ無しに告白をされたかのような感覚に陥った。
少し照れ臭くて、それでいて、そこら中を無性に走り出したくなる衝動。何だか、四十年以上前に引き戻された気分だ。
「風間さんの声も好きだよ」
追い討ちを更に掛けられた。
私は、年甲斐も無く舞い上がりそうになるのを必死で堪えた。