新しい歌
スタート
帰りは浅倉がしつこく車に乗れと言って来たので、仕方なく同乗させて貰う事にした。
寝不足の浅倉が居眠り運転をしなければ無事に帰れる筈だが、そうじゃなくてもこいつの助手席に乗るのは命懸けだ。
「お前にしては気の利いたプレゼントだったな」
「あれですか。あんなもんで驚かれちゃ、浅倉大二郎の名が廃るってもんです。まだまだ玲ちゃんへのプレゼントを用意してんすから」
「まだあったのか?」
「本当は、今日に全て間に合わせるつもりだったんすけどね、AXからデビューするダンスユニットの仕事で手が離せなくて」
「それで今朝まで仕事か」
「ええ。それよりかビッグなプレゼントの方なんすが、シンさんとも話したんすけど、この前録った中から何曲かピックアップしてマスタリングしたやつをNEXTレーベルから発売させちゃおうみたいな流れになったんす」
「NEXTレーベルからか?」
「シンさんのコネをフルに使って」
NEXTレーベル。
新興のレコード会社だが、現在の国内ミュージックシーンに於ける影響力は、かなりのものだ。新興だけあって、トップの連中も若い人間が多い。携帯電話等の音楽配信業務にもいち早く参入していた。業界では後発な事もあって、新人アーティストの発掘にも力を入れていた。
傘下にインディーズ系のレーベルを設立し、野に埋もれた新しい才能を見出し、NEXTへ引き上げ、メジャーデビューさせる。それが通常のパターンだ。多少のコネがあっても、余程じゃなければ自社のメジャーレーベルからはデビューさせない。