新しい歌
「CATの間違いじゃないのか?」
CATはNEXTのインディーズレーベルの一つだ。
浅倉は得意気に首を振り、
「自分とシンさんがタッグ組んだんすよ。CATじゃ役不足っす。但し、条件付きなんですけどね」
「勿体付けるのがお前の悪い癖だ。早く全部話せよ」
「NEXT ONE……」
「まさか……」
「そのまさか」
『NEXT ONE』とは、深夜に全国ネットでテレビ放映されている、ミュージシャンのオーディション番組だ。毎週金曜日に放送されていて、メインスポンサーがNEXTレーベルだ。
一般公募のアマチュアからインディーズ系のプロまでが、同じステージで才能を競い合う。
私も何度か番組を観た事があるが、出演者達のレベルはかなりのもだ。
「一応ですね、シンさんと自分のコネで出演させるとこまでは漕ぎ着けました。本当は、この件も今日のプレゼントにしたかったんすが、まだ正式な日取りが決まっていなくて、それで決定するまでのお預けに」
「出れる事は確実なんだな?」
「それは大丈夫っす。未定と言っても、多分八月末にテレビ録りして、放送が九月中頃ってとこでしょう。でもって年末のグランプリ大会へゴー!」
「グランプリ取る事が条件とか言わないよな」
「最低でも準。年末までに駒を進められなければ、メジャーデビューはパー」
「話が急過ぎやしないか。何も慌てなくとも、じっくりとライブとかで力を付けさせてだな……」
「まだ話は続きがあります。予選は誰の曲でもいいんですけど、本選はオリジナル勝負が条件っす。フーさん、曲間に合いますよね、どうです?」
私は呆れるしかなかった。目尻を下げ、にっこりとこちらを見る浅倉が、無性に憎らしく見えて来た。