新しい歌
正式に番組の収録日が八月最後の日曜日と決まったのは、玲の誕生日から丁度一週間後の事だった。
その事を那津子に知らせる為に、渋谷で会う事にした。
玲を知ってからまだそれ程の日にちが経っている訳でもないのに、那津子と会う回数が、去年一年間よりも多くなっている。
本当は電話で済ませても良かったのだが、那津子に玲のマネージャーとして動いて貰う以上、直接話した方が良いだろうと思った。
待ち合わせは駅前のカフェにした。
既に浅倉から大よその話は聞いていたようで、那津子は私以上に驚いた様子だった。
たまたま収録と同じ日に、市民会館で障がい者達の集いとかのコンサートに玲が呼ばれていると言った。
「夕方からコンサートが始まるのよ」
兄の浅倉の先走りに、どうしたものかと心底困った表情をした。
「ヘリコプターを飛ばさない限り、収録には間に合わないな」
「仕方ないわ。何ヶ月も前から決まっていた話だけれど、私が頭下げて断って置く」
「どっちか選べという事であれば『NEXT ONE』になるのが必然だ。あの子の将来を決めるかも知れない出発の日になる訳だし」
「そうね。そして、貴方には再スタートの日になるのね」
「俺達は関係無いさ。飽くまでもあの子をプッシュするだけの手段さ」
「本当にそれだけ?」
那津子は覗き込むようにして、私から本心を聞き出そうとした。