新しい歌

「ねえ、赤い薔薇の花言葉、調べてみた?」

「いや。それがどうした?」

「いいの。ただ聞いただけ。私は一度も貴方から花を貰った事がなかったなあって思っただけだから」

「それは、催促しているって事かい」

「さあ、どうでしょう。玲ちゃんに赤い薔薇を選んだ理由は?」

「そんなの特別ある訳ないだろ。他に花の名前知らないから」

「じゃあ私の時は、ちゃんと赤い薔薇の意味を調べてからプレゼントしてくれる?」

「別に構わないよ。けど、君の誕生日はまだまだ先じゃないか」

「もっと相応しい日があるじゃない」

 迂闊にもその日を忘れていた。

 何年も別居しているから、というのは忘れた理由にはならないだろう。

 少し寂しそうに笑みを零した那津子は、そろそろ帰るね、と言って席を立った。

「送るよ」

「大丈夫。合宿の件、頼んどくね。じゃあ」

 奈津子の立ち去った後の残り香が、私の気持ちを締め付けた。そして、針でちくりと刺されたかのような痛みが後からやって来た。

 部屋に戻ったら、薔薇の花言葉を調べてみよう……



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