新しい歌

「どうした?」

「なんでもない」

「詩を見られるのが恥ずかしいのか?」

 今度は被っていた毛布を跳ね除けるようにしてこっちへ向き直り、

「ぼくのパソコンに書いてあるよ。机の上のやつ、取って」

 ベッドの横にある机の上に、ノートパソコンがあった。繋がれているコードを抜かないように気を付けながら、彼女の枕元に置いた。

「手伝って」

 彼女が上半身を起こそうとした。

「ねえ、起こして」

 躊躇っている私に彼女は早くとせがんだ。

 腕を彼女の背中に恐る恐る差し入れる。温もりが伝わり、同時に彼女の細い身体を感じた。

 背中のブラジャーのホックが手首に当たり、否が応でも彼女が女である事を意識した。

「サンキュー」

 私の心の内など気付かないのか、或いは判っていて気付かないふりをしてくれているのか……

 敏感なレイの事だ。間違いなく後者の方だろう。

 慣れた手付きでノートパソコンを操作し、

『玲…詩集』

 というファイルを画面に映し出した。


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