新しい歌

 私は貪るように文字を追った。

 彼女が書いた詩は、私がそれまでイメージしていたものとはかなり違っていた。

 短い単語が続いたかと思うと、いきなり問い掛けるような長い文が現われたりと、彼女自身を思わせる奔放さで言葉が踊っていた。

 また、たった三行の詩があったかと思うと、まるで手紙のようなものがあったり。

 私はそれらの全てに目を通した。

 何気に視線を彼女に移すと、私以上に緊張してじっと息を凝らしているのが判った。

 はっ、と気付き、私は慌てて彼女の身体から離れた。

 パソコンの画面を見る事に夢中になっていて、彼女の身体とぴったり接していた事に気が付かなかった。

「なんで、今ぼくから離れたの……」

 掠れたような声で彼女が尋ねた。

 私はそれには答えず、

「ごめん、ごめん。もうこんな時間だったんだね。これ、明日にでもプリントアウトしよう。今夜は遅いから……」

 私がノートパソコンをシャットダウンさせようとすると、彼女の指がそれを拒んだ。

「待って……」

 彼女はキーボードを操作し、あるページを画面に映し出した。

『キスって、どんな味……』



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