新しい歌
開け放たれたドアに身体をもたせ掛け、腕組みをしながら、
「もう少しアップテンポにしてもいんじゃないかな」
「いつの間に聴いていたんだ?」
「何度もノックしたぜ」
「そうか……なあ、これ」
私は彼女の詩を心也に見せた。
彼は渡された詩をじっと見つめ、二度ばかり頷いた。
「どう思う?」
「レイが書いたのか?」
「ああ。心也、これを歌える詩に直せるか?」
「直すのは簡単だ。だが、この詩の持っている世界を壊さずにとなると、彼女ときちんとディスカッションしないとな」
「やってくれ」
「こんな時、あの大酒飲みが居たらな」
「元々、俺達の作詞担当はヒロシだったからな。奴以外では、お前が一番作詞には長けている。レイとこれを新しい歌にしてくれ」
「ならば、今のメロディをその場で弾きながらの方がいいだろ。ピアノがある部屋へ行こうぜ」
「俺は構わないが、明日にしないか。彼女、具合が良くないらしいから」
「おかしいな、今、食堂でツカとダイが彼女と一緒だったぜ。いつも通りのあの子だったが」
「そうか」
「戻って声を掛けて来る」
「俺も一緒に行くよ」
書き掛けた譜面を手にし、私は心也と玲の所へ行った。