新しい歌
何とか曲らしくなって来た。後はレイのボーカルを仕上げ、自分達の演奏をこの曲に相応しく肉付けして行くだけだ。
「さてと、曲名はどうする?」
深海魚が私と心也に向って聞いて来た。
レイが書いた元の題名は『ぼくは知っている』だったが、曲の題名となるともっと訴え掛けるようなインパクトが欲しかった。
その事は私だけじゃなく、心也もそうだし元の詩を書いたレイ本人も判っていた。
「レイちゃんの心の叫びを表現したいんでしょ。心の奥底に流れているもんのを。横文字にしてみたら?」
那津子が出した案にみんな乗った。
幾つもの曲名がそれぞれの口から発せられ、ああじゃないこうじゃないと声高に言い合った。
レイはそれを楽しそうに聞いている。
突然、浅倉が閃いたと喚いた。
「ディープハートってのはどうすか?」
「ちょっと安直過ぎないか」
「いや、寧ろストレートでいいんじゃないか」
結局、浅倉の案が通った。奴の鼻の穴が得意気に大きくひくついていた。
「一つレイに聞きたかったんだが、詩の最後。あれ、本当はまだ何か書きたかったんじゃないのかい?」
「そうなのかなあ、正直、ぼく自身にもよく判んないだ。考えた時は、自然とあそこまで言葉が出て来たけど、あそこで言葉が止まっちゃったから……うん、そうかも。シンさんの言う通りかも。でも、繋げる言葉が思い浮かばない……」
「レイ、何度も歌ってみろよ。歌って歌って歌い抜いて、完全に自分の言葉で表現するんだ。そうすれば、レイのことだから、その後の言葉なんて自然と生まれて来るさ」
私の言葉に彼女は頷き、覚えたばかりの『ディープハート』を何度も口ずさんだ。