「大キライ」の恋。
「おい、杏里。食い物くれよ。」
「げッ!!早々に食べ物の催促?
意味分かんない。」
「アメとかガムとか持ってるだろ?
早く、くれくれ。」
「分かった、分かったから。」
「杏里、アタシにも頂戴!!」
「はいよ~。」


渋々机の横に掛けてある通学バッグから
アタシの大好きなキャンディーを出す。
でも、1人にあげると周りの人に
あげたくなってしまう性格で、
塔子を始め、前の席の子や右隣の席の子、
そんな感じで10人位に
キャンディーを配った。
何となくだけど「感じのいい人」に
見られたかったのかもしれない。
「エビで鯛を釣る」ぢゃないケド(笑)。


---そんな中、左隣の席に座っていた
男子が居た。高校に入って初めて
見る顔だった。
坊主頭だから・・・佑介と同じ
野球部なのかな?と思った。
そう言えばさっきから佑介と
話してるなぁ・・・。


「ねぇ、キャンディー食べる??」
アタシは(初めまして。)の意味も
込めて左隣の男子に声を掛けた。
そして彼の机の上にキャンディーを
握った手を差し出した。


「・・・要らない。」


・・・・・・・・はぁ???
ちょっ、ちょっと待って。
何で人がキャンディーあげるって
言ってるのに、受け取らないんだ??
今食べなくても受け取らない?普通。
何だ、この男。
チョオ感じ悪ーーーーっ!!!!


「あ、そう。」


アタシは差し出した手をすっと引っ込めた。
何かやけに恥ずかしくなった。


彼にあげようとしたキャンディーの
袋を破り自分の口へぽいっと放り込んだ。
そのキャンディーの味なんて
全然分かんない。苦くて渋い感じがした。


(絶対に2度とキャンディーなんか
あげるか!お前なんかに。
バーーーーーーカ!!)
心の中で叫んだ。


第一印象最悪の男。
何だかつかみ所が無い感じで、
寡黙で、無口で。
やたら目に力があって。
それでそれで・・・


あーーーーーーっ!!モォ!!
やたらと絡みにくい雰囲気を
かもし出してるんぢゃないよ!
こんな人が隣の席だと思うと・・・↓
早く席替えしてくれないかなぁ↓↓↓


アタシは完全に「被害者」ぶっていた。
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