ルシファーゼの伝言
衝撃は凄まじかった。電車内は金属が擦れる音が、鳴り響いた。僕は手すりにつかまって、激しく揺れる床に足をとられながら、必死に耐えた。悲鳴が上がった。

上坂さんのほうを見た。目があった。上坂さんも手すりにつかまっている。

電車がカーブに差し掛かった。僕は、視界の右から飛んできたビニール傘を手で振り払った。電車内のあらゆる物が、飛び跳ねた。

次の瞬間、僕は驚いた。上坂さんは頭を両手で押さえていた。上坂さんの頭から、赤い血が流れ出ていた。血は髪を伝い、白い制服の上に大量に付着していた。

「だ、大丈夫?上坂さん!」

「頭が痛いよ。なにかにぶつかったみたい。どうしよう」

「ちょっと待ってて、そっち行くから」

上坂さんは狼狽していた。僕は地震のように揺れる床を凝視してから、えいやっと向かい側の席に跳んだ。空中を、まるでうさぎのように。

無事に着地した、次の瞬間に転んだ。僕は上坂さんの上に覆いかぶさるようにして倒れた。上坂さんの小さな悲鳴が聞こえた。

「ごめん。上坂さん」

なんとか立ち上がり、手すりにつかまりながら、僕は上坂さんに謝る。

「大丈夫といいたいところだけれど、頭が痛いよ。痛いよ」

上坂さんの声はどんどん小さくなっていく。僕は焦って鞄からタオルを取り出した。

「これで押さえて。ね?」

消えそうな声で上坂さんは頷いた。


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